なぜ氷は水に浮くのか?水が凍ると軽くなる理由

なぜ氷は水に浮くのか?水が凍ると軽くなる理由

コップに注いだ麦茶へ、氷がぷかりと浮かんでいます。

あまりに見慣れた光景で、普段は気にも留めません。

たいていの物質は、冷えて固まると液体のときより重く沈みます

水だけが例外で、凍った自分の上へ氷をふわりと浮かべてしまう。

氷が水に浮くという当たり前の裏側には、いったい何が隠れているのでしょうか。

「固体は沈む」がふつうなのに

まずは、水がどれほどの変わり者なのかという話から。

物質の多くは、温度が下がるほど縮んで密になります。

液体が固体へ変わるときも、粒どうしがぎゅっと詰まり、体積は小さくなるのが普通の姿。

だから固まったかたまりを、もとの液体へ戻すと底へ沈みます。

溶けたロウソクのロウを思い浮かべると、腑に落ちるかもしれません。

固まったロウは、液のロウの中でゆっくり沈んでいく。

ところが水は、この「固体は沈む」という常識をあっさり裏切ります

そして氷は、水の上に顔を出したまま浮き続けるのです。

同じ物質なのに、固体と液体で重さの順番が入れ替わってしまう。

ここに、水という物質の少し変わった一面が見えてくるのです。

水が凍ると体積が増えるからくり

液体の水と氷の分子配置の比較図:凍ると水素結合で六角形に整列してすき間が生まれ、体積が約1割ふくらんで密度が約0.91になる

氷が浮く理由は、たった一つの事実に行き着きます。

水は凍ると体積がふくらみ、同じ重さのまま密度が小さくなる

まわりの水より軽くなったものは、押しのけた水に支えられて浮かびます。

つまり氷は、自分がどけた水の重さのぶんだけ、水面へ顔を出すのです。

このからくりは、海に浮かぶ大きな氷山でも、台所のコップの氷でも変わりません。

なぜ凍ると体積が増えるのか

ここで「そもそも、なぜ凍るとふくらむの?」という声が聞こえてきそうです。

カギをにぎるのは、水の分子どうしを結ぶ水素結合という弱い力。

液体のうちは、分子が自由に動き回り、たがいにすき間なく寄り集まっています。

ところが凍る段階になると、分子は水素結合で規則正しく手をつなぎ、結晶へと整列していく。

その並び方が、六角形を基本にした、すき間の多い骨組みになるのです。

だから固まった氷は、液体の水よりもかさばって、密度が下がるというわけです。

「満員電車の混雑が、整列した行列になって広がる」と考えると、腑に落ちるかもしれません。

数字で見ると、どれくらい軽い?

軽さの度合いは、具体的な数字を並べるとはっきりします。

同じ体積で比べたとき、水の重さを1とすると、氷はおよそ0.91ほど。

つまり氷は、水よりおよそ1割も軽いことになります。

水という液体そのものにも、じつは面白い癖が隠れているのです。

いちばん縮んで密になるのは、0℃ではなく約4℃のとき。

正確には3.98℃で、そこから冷えても温まっても、水はわずかにふくらみます。

そして0℃で凍って氷に変わると、体積はさらに大きく増えるのです。

「浮く氷」が守っている風景

この小さな性質は、じつは地球の生き物を大きく支えています。

冬の湖や池を、少し思い浮かべてみてください。

水面から冷えていくと、まず表面にうすい氷が張ります。

その氷が軽いおかげで、フタのように水面へ残り、下の水を外気の寒さから守ってくれるのです。

もし氷が重くて沈む物質だったら、湖は底から凍りつき、魚も水草も逃げ場を失っていたはず。

氷が浮くという性質が、水の底で暮らす生き物の冬を守っているわけです。

台所や水道管で出会う「氷の力」

暮らしの中でも、水がふくらむ力はときどき顔を出します。

ペットボトルの飲み物を凍らせて、パンパンにふくらませてしまった経験を持つ人も多いはず。

あれは、凍る水が容器を内側から押し広げる力のしわざなのです。

その力はとても大きく、水道管や瓶さえ内側から割ってしまうほどで、およそ2,000気圧に達するとも言われます。

これは水深2万メートルの海の底に匹敵する強さで、ふだんの容器では到底受け止めきれません。

冬の朝に地面を持ち上げる霜柱や、岩を少しずつ砕く風化も、もとをたどれば同じ氷の力。

数字を添えた実験は、ニチレイ「氷の実験室」でもやさしく紹介されています。

氷は水よりどれくらい軽い? 氷の重さを考える(2)|氷の実験室|株式会社ニチレイ

最後に

氷が水に浮くのは、あまりに身近すぎて見過ごしがちな出来事です。

けれど、その裏には「水は凍るとふくらむ」という、水だけの変わった性質が横たわっています。

当たり前に見える現象ほど、理由をたどると世界の仕組みが顔を出す

コップの氷ひとつからでも、話は密度や分子のつながりまで広がっていく。

身近な「なぜ」を放っておかず、ときどき立ち止まって眺めてみる。

そんな小さな寄り道が、日々の景色を少しだけ面白くしてくれます

以上です。