生成AIに調べものを頼むと、答えの横に出典のリンクが並ぶ場面が増えました。
その裏にあるのが、グラウンディング(grounding)と呼ばれる考え方です。
モデルの記憶だけで答えさせず、検索結果や手元の文書といった根拠に答えを結びつけ、どの部分がどの根拠に基づくかまで返す仕組みを指します。
仕組みが分かると、出典付きの答えをどこまで信じてよいか、どこを自分で確かめればよいかにも説明がつきます。
グラウンディングは答えと根拠をひもづける考え方
Microsoft の Azure AI Content Safety のドキュメントは、グラウンディングされた回答を「与えられた情報に沿い、推測や作り話を避けた回答」と説明しています。
このとき根拠として渡す情報は、グラウンディングソースと呼ばれます。
反対に、根拠にない内容や根拠と食い違う内容を答えてしまう状態が「非グラウンディング(ungroundedness)」です。
よく似た言葉に RAG がありますが、こちらは資料を検索してプロンプトに差し込む手順を指します。
グラウンディングは「答えが根拠に沿っているか」「どの根拠を使ったか」までを含む目標で、RAG はそれを実現する手段の一つという関係です。
Google Cloud のドキュメントでも、RAG は Google 検索や Elasticsearch と並んで、グラウンディングの方法の一つに数えられています。
RAG の手順そのものは、別の記事で整理しました。
根拠のない作文がなぜ起きるのかは、ハルシネーションの記事で扱っています。
仕組みは「探す・答える・対応を返す」の三段
各社の API を見比べると、グラウンディングはおおむね三つの段階で動いています。
一つ目は根拠を用意する段階で、モデルが検索を走らせるか、利用者が文書を渡します。
二つ目は、その根拠を読ませて答えを作る段階です。
三つ目が、答えのどの部分がどの根拠に基づくかを、文章とは別のデータとして返す段階です。
プロンプトで「出典も書いて」と頼むだけの方法との違いは、この三つ目にあります。
検索結果に結びつける(Gemini と OpenAI)
Gemini API の Grounding with Google Search では、モデルがまず、Google 検索で答えが良くなるかどうかを判断します。
必要だと判断すると、検索クエリを自分で作って 1 回または複数回実行し、その結果をまとめて答えます。
2026年9月時点のドキュメントでは、本文の文字の範囲(start_index と end_index)と根拠の URL を結ぶ注釈が url_citation です。
詳しい流れは Gemini API の Grounding with Google Search のドキュメント に載っています。
OpenAI の Web 検索ツールも、実行した検索を web_search_call として返し、回答の本文には URL・タイトル・文字位置を持つ url_citation の注釈を付けます。
こちらの出典は OpenAI の Web search のドキュメント です。
手元の文書に結びつける(Claude の Citations)
Anthropic の Claude API には、渡した文書に答えを結びつける Citations という機能があります。
文書ごとに citations を有効にすると、プレーンテキストや PDF は文の単位に区切られます。
そのうえで、答えの各部分に「どの文書のどこを引いたか」が付いて返ってきます。
次は、公式ドキュメントに載っている応答例からの抜粋です。
"content": [
{ "type": "text", "text": "According to the document, " },
{
"type": "text",
"text": "the grass is green",
"citations": [
{
"type": "char_location",
"cited_text": "The grass is green.",
"document_index": 0,
"document_title": "Example Document",
"start_char_index": 0,
"end_char_index": 20
}
]
},
// 省略
]
ドキュメントは、プロンプトで出典を書かせる方法と比べた利点として、引用が渡した文書の実在する位置を必ず指すことを挙げています。
引用した文そのもの(cited_text)が出力トークンに数えられないことも、利点の一つに入っていました。
Anthropic の評価では、プロンプトだけで引用させるより、文書の中の関連が深い箇所を引きやすかったとも書かれています。
仕様の細部は Anthropic の Citations のドキュメント にまとまっています。
どこで使われているか
使いどころの分かれ目は、根拠をどこから持ってくるかです。
最新の出来事や仕様の変更のように、モデルの学習が終わった後に動いた話題を扱うときは、検索に結びつける形が向いています。
社内規程や契約書、製品マニュアルのように、答えてよい範囲が決まった文書があるときは、手元の文書に結びつける形が合います。
どちらの場合も、利用者が引用された原文だけを開いて確かめられるのが利点です。
答えを作った後に、根拠と照らして検査する使い方もあります。
Azure AI Content Safety の groundedness detection は、要約や質問応答の答えを根拠と突き合わせ、根拠に基づかない部分を見つける機能です。
理由を説明するモードや、根拠に合わせて文を直す修正機能(プレビュー)も用意されています。
ただし 2026年9月時点のドキュメントでは、対応言語は英語のみで、日本語などを送っても精度は英語向けのままとされています。
機能の説明は Azure AI Content Safety の groundedness detection のページ で読めます。
出典が付いていても正しいとは限らない
グラウンディングは誤りを減らすための仕組みですが、付いた出典がそのまま品質の保証になるわけではありません。
知っておくと判断を誤りにくい落とし穴が、三つあります。
出典が主張を支えていないことがある
Nelson F. Liu らが 2023 年に発表した論文は、当時の生成検索エンジン 4 つ(Bing Chat・NeevaAI・perplexity.ai・YouChat)の回答を人の手で評価しました。
その結果、引用で完全に裏づけられた文は 51.5%、文を実際に支えていた引用は 74.5% にとどまりました。
出典のリンクがあることと、その出典が文を支えていることは別の話です。
対象は 2023 年時点のサービスなので、今の各社の数字としては読めません。
論文は Evaluating Verifiability in Generative Search Engines で公開されています。
根拠が古ければ、古い答えに沿ってしまう
Microsoft のドキュメントの例では、「2024 年 7 月時点の金利は 4.5%」という根拠に照らして、答えの中の「5%」を根拠と合わない部分として検出しています。
裏を返すと、グラウンディングが確かめるのは根拠に沿っているかどうかで、根拠そのものの正しさまでは確かめません。
根拠の側が古ければ、古い値に沿った答えもそのまま「根拠どおり」と判定されます。
同じドキュメントも、根拠として使う情報を正確で最新に保つことをベストプラクティスに挙げていました。
表示の決まりとコストが付いてくる
Gemini の検索グラウンディングでは、検索候補(search suggestions)の表示について、利用規約で要件が定められています。
OpenAI も、Web の検索結果を利用者に見せるときは、引用を見える位置にクリックできる形で置くよう求めています。
費用の面では、Gemini 3 系のモデルは、1 回のリクエストの中でも実行した検索クエリの数だけ課金される仕組みです。
Claude の Citations も、文書の分割などのために入力トークンがわずかに増えるとドキュメントに書かれています。
また Citations は構造化出力と同時には使えず、両方を指定すると 400 エラーが返ります。
最後に
グラウンディングは、AI の答えを検索結果や手元の文書に結びつけ、どの部分がどこに基づくかを返す仕組みでした。
一方で、出典の有無と中身の正しさは別で、根拠が古ければ答えも古いままになります。
出典は答えを確かめる入口であって、正しさの保証ではないと捉えておくと、どこを自分で確かめればよいかが見えてきます。
以上です。













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