2026年10月12日(月)から10月18日(日)までの一週間に世に出た、新しいプロダクトを振り返ります。
スタートアップが出したもののうち、仕事の詰まりを取るものを選び、出典つきで紹介します。
今週の核は、業務のデータをMCPでAIから直接扱える形にするものと、AIごと社内の閉じた環境に持ち込むものが並んだことです。
今週は13本を取り上げます。
なお10月18日(日)ぶんは次回にまわします。
先週は、営業CRMのMCP対応や建設のKYシート、工場の計器の自動取り込み、納品書の照合など、紙や目視で読み取っていた情報をAIが直接扱うプロダクトを14本紹介しました。
現場の課題を解くもの ——営業、介護、農業、再エネの施工
今週いちばん多かったのはこの型で、5本ありました。
営業と新人教育
人に聞かないと進めない営業の仕事に向けたものが、2本ありました。
2023年設立の PeopleX は10月14日、営業プラットフォームの中核として「PeopleX AI商談支援」の提供を始めました。
商談をAIが記録・要約してCRMへの入力まで済ませ、共通の基準で評価して、受注や失注につながる兆候と案件ごとのリスクを示します。
勝ちパターンが一部の人の頭の中にしか残らない営業組織で、記録と振り返りをAIに任せる方向です。
2025年設立の VESPERコンサルティングは10月16日、マニュアル管理のSaaS「KATA」の提供を始めました。
業務マニュアルと業務フローを1つの画面で作り、現場が本文から直接意見を返せて、更新の差分と履歴も残ります。
年に一度の手続きや担当の交代、中途入社の新人教育のように、たまにしか開かないせいで古くなるマニュアルに向けた製品です。
介護、農業、再エネの施工
紙やExcel、担当者の勘に分かれていた現場の情報を1か所にまとめるものは、3本でした。
2024年設立のシスタは10月13日、介護施設向けの「みちケア」に、QRコードで打刻する勤怠と、職員ごとの1日の業務計画を自動で組む「みちケア プラン」を加えると発表しました。
シフトとケアプランから、その業務をできる職員にだけ割り当て、人が足りない部分は確認が要る箇所として知らせます。
勤務表はExcel、出退勤はタイムカードと別々に管理され、欠勤のたびに経験のある職員が業務表を組み直していた現場に向けた更新です。
2023年設立で東京大学発のきゅうりトマトなすびは10月14日、農業AI「ノウノウシリーズ」を広げ、人員と資材、受注と出荷、予実を扱う4製品をβ版で出しました。
あわせて、農場の業務データをChatGPTなどの外部のAIから権限つきで扱える「ノウノウMCP」も公開しています。
圃場ごとの作業や資材の残りといった農場固有の今の状態を、別々の仕組みから集め直さずにAIへ渡せるようにする作りです。
2024年設立の Gen R. は10月15日、太陽光発電と蓄電池の販売施工会社に向けた「タイナビワークス」の提供を始めました。
営業から施工、原価、請求と入金、保守までを1つのアプリにまとめ、協力会社も同じアプリに参加できます。
顧客管理のツールとExcelの工程表、電話の間で同じ情報を何度も書き写していた中小の施工会社に向けたもので、料金は基本パックで月額6万円(税抜)からです。
AIで「できない」をなくすもの ——エンジニア不在、画面の操作、説明のし直し
AIを使いたくても、作る人や操作の手間、記憶の切れ目が壁になっていた側に立つものが、3本ありました。
2025年設立のデライトは10月13日、AIエージェントの実行基盤「Agentino」をPublic β版として公開しました。
業務のやり方を言葉で伝えるとAIが手順書に書き起こし、そのまま実行できる形にしてチームで共有できます。
専任のエンジニアがいないチームでも、AIエージェントを業務に載せられるようにする作りで、Claude CodeなどからMCPで指示することもできます。
Tofu は10月16日、AI自動記帳サービス「tofu」のデータにClaudeから接続できる「tofu MCPコネクタ」をβ版で出しました。
会計事務所や経理の担当者が話しかけるだけで、証憑や仕訳の検索と集計、顧問先や仕訳ルールの登録まで頼めます。
Claudeが触れるのはtofuでその人に許可された範囲だけで、記帳ツールの画面を一つずつ操作していた作業を会話に置き換えます。
2024年設立、島根県松江市の XiNAPSE は10月17日、AI秘書「XiNAPSE-Agent」をβ版として提供し始めました。
いつものChatGPTかClaudeに秘書の手順を足し、仕事ごとの進み具合や次の作業を利用者のGoogleドライブに記録していきます。
AIを替えるたび、新しいチャットを開くたびに案件の経緯を説明し直す手間を、記録をAIの外の手元に置くことで減らす作りです。
遅れていた領域を便利にするもの ——工場、基幹システム、紙の帳票、閉じたネットワーク
デジタル化やAIの導入が、現場の事情で止まりやすかった領域に向けたものは、5本でした。
2025年設立のゼントロンは10月13日、工場や物流の設備をつなぐデータ基盤「NEXUS」の提供開始を発表しました。
設備やセンサー、ロボットのデータをリアルタイムで集めて整え、AIの学習やデジタルツインに渡します。
工程ごとに入れた自動化設備のデータが孤立し、自動化が部分ごとにとどまっていた製造現場に向けたものです。
2021年設立、米 Tailor の日本法人であるテイラーは10月15日、基幹システムの開発キット「ERP-Kit」の商用提供を始めました。
大企業の基幹システムの構築で使ってきた24のモジュールに、AIエージェント向けの開発手順書と設計書の照合ツールを付けて一式で出します。
AIでコードは速く書けても、止められない基幹業務の品質の確かめが追いつかず、内製化が手前で止まる課題に向けた製品です。
2024年設立のジンベイは10月14日、LLMを使うAI-OCR「GenOCR」を、GPUもネット接続も無いPC1台で動かすCPU版として発表しました。
医療の問診票や自治体の申請書、建設の点検記録など、手書きや決まった型の無い帳票を、画像も結果もPCの外に出さずに読み取ります。
個人情報を扱うためクラウドに送れず、GPUサーバーも置けなかった少人数の部署や自治体に向けた形です。
2023年設立のクラフテクスは10月16日、紙の帳票をスマートフォンで撮ってkintoneに登録する「現場スキャン for kintone」を、10月19日から提供すると発表しました。
無料のiOSアプリで点検表や納品書にかざして送ると、AI-OCRがkintoneのレコードの各項目に入力します。
現場で手書きした紙を事務所に持ち帰り、事務の担当者が1枚ずつ打ち直していた作業を減らす狙いです。
2024年設立、茨城県つくば市の SIGQ は10月16日、インシデント対応のAI「Incident Lake」を閉じた環境で動かす「Incident Lake Self-Hosted」の提供を始めました。
顧客のクラウドやデータセンターの中で監視の仕組みと一緒に動かし、検知から報告書づくりまでを外部と通信せずにAIの支援つきで進めます。
外部のLLMにデータを送れないため、インシデント対応にAIを使えなかった金融や自治体、医療などに向けたものです。
ただし、中核の自社モデル「Otter」は、会社自身が10月13日の時点で実用段階の手前と説明しています。
最後に
今週は、業務のデータをMCPで外のAIに開くものと、AIを外に出せない現場の中で動かすものが、同じ週に並びました。
どちらも、AIが業務のデータに触れられないという詰まりを、逆の側から外す作りです。
私は現場の詰まりを取るプロダクトに目が向くので、来週も同じ視点で新しく出たものを追います。
以上です。















コメントを残す